これまで、術前保存血清と術後血清のLABScreen single antigen検査を行てきているが、classI、classIIともに、術前の抗HLA抗体の有無とグラフトサバイバル、DSA抗体の有無とグラフトサバイバル、患者生存率との統計学的相違はみられていない。24年度も症例を増やして検討を続けたが、やはり有為な生着、生存率の差は認められなかった。一方、症例を増やすと、術後血清における抗HLA抗体陽性者はclassI 7%、classII15%程度にみられ、DSA陽性者はclassIはゼロのまま、classIIは9%であった。 昨年までの検討と同様、移植後のDSA陽性となった患者は全てclassII抗体であった。2症例で、組織学的には移植後急性拒絶反応ではあるが、術後1週間程度と発症が早期であり、かつトランスアミナーゼの値が500IU/Lと著明に上昇する症例を経験した。これらの症例では、class I陽性が確認され、症例が少ないので決定的なことは言えないが、移植肝ダメージの大きい拒絶が抗ドナー抗体の存在と関係があることを示唆している。 本研究は、母集団の少なさが大きな制約であったが、一方、個別症例での液性免疫の意義はなお十分検討していくべき対象であることが示され、今後も、拒絶症例の治療強度の修飾に活かすテータとなるよう測定を継続する予定である。
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