研究課題/領域番号 |
22591419
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
杉本 貴昭 兵庫医科大学, 医学部, 研究生(研究員) (60399152)
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研究分担者 |
藤元 治朗 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (90199373)
平野 公通 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (90340968)
飯室 勇二 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (30252018)
近藤 祐一 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (70567213)
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キーワード | 肝静脈還流障害 / 鬱血性肝障害 / 3次元肝切除シミュレーション |
研究概要 |
肝静脈還流障害による鬱血性肝障害は、複雑肝切除、生体肝移植、骨髄移植後のhepatic veno-occlusive diseaseにおける再生遅延、肝不全の原因となり、その病態解明と治療法の開発が急務である。一方、外科臨床における安全確実な肝切除術の遂行のために、門脈灌流領域と静脈還流領域を考慮した術式の検討は重要であるが、複雑な肝の脈管構造と立体構築、個体間の形態差によりその評価に時に難渋する。本施設で導入されている肝切除シミュレーションシステムを用い、解剖学的解析を行った。 【対象および方法】肝癌切除症例250例に対し、日立OVAを用いてMD-CTより3D統合画像を作成し、門脈3次分枝の灌流領域および肝静脈ドレナージ領域を解析した。【結果】(1)門脈分岐形態:門脈3次分枝は頭側尾側型:CC型(CouinaudによるS5・S8の亜区域分類) 90例(36%)、腹側背側型:VD型(Hjortsjoら)75例(30%)、箒型(門脈3次分枝が同時に3本以上分岐)85例(34%)であった。(2)静脈形態:V8が中肝静脈のみに流入は9.3%、右肝静脈に流入するのは16.9%、中・右肝静脈いずれにも流入するのは69.4%であった。またV5が中肝静脈のみに流入は36.9%、右肝静脈のみに流入するのは23.0%、中・右肝静脈いずれにも流入するのは68.5%であった。肝細胞癌手術では、門脈灌流領域に準じた系統的治癒切除が有用であるが、個々の解剖学的変異によりうっ血領域を生じた形で肝切除が行われる場合が生じ術後合併症のリスクが上昇する一因となる。250例の解析では個々の解剖形態に準じた、静脈の合流形態に加え門脈の灌流領域をも考慮した"オーダーメイド肝切除"を行うことがより安全確実な肝切除を行うことに有用であることが示唆され、静脈還流領域肝体積の評価と合わせ更なる見当が必要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究代表者が家庭の事情により、研究の実施が困難な状況となり、計画に準じた研究の進捗が得られなかった。 現在、研究分担者と共に研究計画の再構築を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
本施設の肝切除シミュレーションシステムは平成23年度まで先進医療を認可され(平成24年4月以降保険適応)、臨床応用症例数は全国的に有数の規模であるが、平成23年度肝切除症例104例中に肝静脈再建例は認めず、術前の肝静脈切除に伴ううっ血領域の評価及び術式検討には有用であったものの、頻度が低く症例数のさらなる蓄積が必要な状況であった。そこで門脈の分岐形態と灌流領域、その領域のドレナージ静脈の同定および還流領域体積の検討まで評価対象を拡大し、より臨床に即した肝静脈還流障害の検討を行うこととし開始した。また研究代表者の置かれた状況から継続的な実験の進行が一時的に不可能となった動物実験についても、早急に再開する予定である。
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