研究概要 |
手術を施行した遠隔転移を伴わない原発性乳癌841例に対して、ヘマトキシリンエオジン(HE)染色と免疫染色(ER,PgR,HER2)を行った。その結果、642例(76.3%)がホルモン受容体(ER,PgR)陽性乳癌、138例(16.4%)がHER2陽性乳癌、118例(14.0%)がトリプルネガティブ乳癌(ER,PgR,HER2いずれも陰性)であった。更に、118例のトリプルネガティブ乳癌の中で、生物学的特徴や臨床動態が大きく異なる非浸潤性乳管癌、アポクリン癌、髄様癌を除外した102例を本研究の対象とした。 HE染色による最大浸潤径は、0-20mmが54例(53%)、21-30mmが18例(18%)、31-50mmが21例(21%)、51mm以上が9例(9%)、中央値は18mmであった。これは、同時期の全乳癌の最大浸潤径中央値14mmと比較し有意に高い値であった。また、Nottingham分類による組織学的悪性度は、Grade Iが5例(5%)、Grade IIが32例(31%)、Grade IIIが65例(64%)であり、多くの症例が高い生物学的悪性度を有していた。 脈管侵襲はD2-40,CD31染色で評価したところ、39例(38%)で中等度以上の脈管侵襲が認められた。また、血管新生能評価目的にCD31染色を行い、Microvessel Densityを計数した。その結果、48例(47%)が20以上の高値を示しており、約半数の症例で高い血管新生能を有していた。 増殖マーカーで、最も客観的かつ定量的評価が可能だったのはKi-67染色であった。1000細胞で計数したKi-67 labeling indexは、0-15%が18例(18%)、16-30%が25例(24%)、31-40%が11例(11%)、41-100%が48例(47%)、中央値は37%で、31%以上の高い腫瘍増殖能を有する症例が58%認められた。 さらに、トリプルネガティブ乳癌の基底細胞への分化を評価するために、CK5/6,CK14,CK17,p63,CD10,EGFR染色を行った。トリプルネガティブ乳癌のなかでもさらに予後不良である基底細胞型をCK5/6,EGFRのいずれかが陽性である事と定義すると、67例(66%)が基底細胞への分化を有していることが判明した。
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