研究概要 |
1998年から2007年に東北大学病院乳腺内分泌外科で手術を施行した原発性乳癌841例に対し、パラフィン包埋ブロックから病理組織検査を行い、通常型浸潤性トリプルネガティブ乳癌102例を抽出し本研究の対象とした。 最大浸潤径は21mm以上が47例(48%)、中央値18mmであり、組織学的悪性度はGradeIIIが65例(64%)であった。脈管侵襲(D2-40,CD31)は、39例(38%)で中等度以上であり、また血管新生能(CD31によるMicrovessel Density計数)は、48例(47%)が20以上の高値であった。腫瘍増殖能(Ki67)は、31%以上が59例(58%)、中央値は37%であった。基底細胞型(Basal type)昏の分化を評価するために、CK5/6,CK14,CK17,p63,CD10,EGFR染色を行い、67例(66%)がBasal typeへの分化を有していた。 以上によって得られた臨床病理学的因子と、実際の臨床動態との関連性を明らかにするために、これらの102症例に対して診療録・臨床データベースをもとに、患者背景因子(年齢、乳癌既往歴、家族歴、閉経前後)、術前・術後薬物治療(化学療法、内分泌療法)の有無、手術術式、再発の有無・時期、再発後治療、転帰に関して情報を集積し、転帰等で不明な部分に関しては電話調査にて補足した。 診断時年齢中央値は56(30-81)歳、閉経後乳癌が62例(61%)と半数以上であった。家族歴は12例(12%)に認められ、諸家の報告による日本人女性の乳癌全体における家族歴保有率と比較しやや高い傾向にあった。手術術式は乳房温存手術、乳房切除術が半数ずつみられ、全例に術前もしくは術後の薬物治療が行われていた。 術後観察期間(7-146カ月、中央値68.5カ月)内に、37例に再発が認められ、28例が死亡していた。これらの再発・死亡イベントに対して、それぞれの臨床病理学的因子の予後予測因子としての意義をCox proportional hazard modelを用いて単変量解析したところ、最大浸潤径、リンパ節転移状況、組織学的悪性度、Basal type、Ki-67 labeling index、Microvessel Densityが有意に再発・死亡イベントと関連していた。一方、年齢、脈管侵襲、他のバイオマーカーは予後との関連性は認められなかった。
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