研究概要 |
1)基礎研究による乳癌細胞抑制効果と作用機序の検討(担当:井口、馬渡(大学院生)) 昨年度までの、乳癌細胞株(MCF-7,SKBR-3,MDA-MB-231,BT474)を用いた実験にて、バルプロ酸ナトリウム(VPA)は乳癌細胞に対し、抗てんかん薬としての常用量で達する血中濃度と同等の濃度において、細胞増殖抑制効果があることを確認した。 平成23年度は、VPAの乳癌細胞(SKBR-3,BT474)に対する分化誘導・アポトーシス誘導の確認を行った。 VPAはSKBR3に対しp21WAF-1蛋白の誘導を示すことをウエスタンブロットにて確認した。同様に、VPAはBT474に対してもp21WAF-1蛋白、p27蛋白の誘導を示した。 一方、VPAはSKBR3,BT474に対しCleaved caspase3蛋白の誘導を示すことをウエスタンブロットにて確認した。また、免疫染色でも、VPAはSKBR3に対し、Cleaved caspase3の発現増加を示した。Tunnel染色でも同様であった。 このことからVPAが乳癌細胞に対し、増殖抑制効果を示す機序に一つとして細胞の分化誘導、アポトーシス誘導が関連している可能性が示唆された。 2)臨床試験による乳癌治療におけるVPA安全性と有効性の検討(担当:太田、井口) 平成23年度は、登録症例数を増やすために「転移・再発乳癌に対するパクリタキセル+valproic acidの臨床試験」に加えて「転移・再発乳癌に対するアルブミン結合パクリタキセル+valproic acidの臨床試験」を計画し、実行した。さらに症例集積を継続した。登録症例においてvalproic acidの併用によってタキサン系抗がん剤による末梢神経障害を抑制し、強い抗腫瘍効果を認めた症例を数例に経験した。現在のところ、大きな副作用は出現しておらず、臨床応用が期待できる。
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