研究概要 |
1)基礎研究による乳癌細胞抑制効果と作用機序の検討 昨年度までの、乳癌細胞株(MCF-7,SKBR-3,MDA-MB-231,BT474)を用いた実験にて、バルプロ酸ナトリウム(VPA)は乳癌細胞に対し、細胞増殖抑制効果があることを確認した。VPAはSKBR3に対しp21 WAF-1蛋白の誘導を示すことを確認した。VPAはSKBR3,BT474に対しCleaved caspase3蛋白の誘導を示すことを確認した。また、免疫染色でも、VPAはSKBR3に対し、Cleaved caspase3の発現増加を示した。Tunnel染色でも同様であった。このことからVPAが乳癌細胞に対し、増殖抑制効果を示す機序に一つとして細胞の分化誘導、アポトーシス誘導が関連している可能性が示唆された。 昨年は、VPAの非ヒストン蛋白の脱アセチル化阻害作用の確認としてHSP70とHSP90に着目した。HSP 70とtubulin のアセチル化作用があることを、免疫沈降とウエスタンブロットによって確認した。一方、HSP 90のアセチル化作用については確認できなかった。このことより、VPAはHSP70 の脱アセチル化阻害作用を介して、HSP90 の機能を阻害し、HSP90 のクライアントプロテインである増殖系のシグナルタンパクを減少させ、抗腫瘍効果を発揮している可能性があると考えられた。 2)臨床試験による乳癌治療におけるVPA安全性と有効性の検討 平成24年度も引き続き、登録症例数を増やすために「転移・再発乳癌に対するパクリタキセル+valproic acidの臨床試験」に加えて「転移・再発乳癌に対するアルブミン結合パクリタキセル+valproic acidの臨床試験」を計画し、実行した。やや症例集積が遅れているため少数例での検討になる可能性がある。
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