今回申請者は、抗癲癇薬であるバルプロ酸ナトリウム (VPA) がヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害作用を有することに注目し、VPAを用いた乳癌の新しい治療法の開発を目指した研究を行った。様々な乳癌細胞株に対し、有効血中濃度と同等の濃度(1mM)にて増殖抑制を示すことを明らかにし、その機序は、ヒストンアセチル化による直接の分化、アポトーシス誘導の他、非ヒストン蛋白であるHSP70 のアセチル化を介したHER2などのクライアントプロテインの抑制も関与している可能性があることを証明した。この研究により今後、乳癌におけるVPAと標準治療との併用は、癌の増殖抑制の観点から有用となる可能性がある。
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