(1)乳癌転移病巣のFES集積程度と内分泌治療効果予測 閉経後の転移病巣を有する乳癌を対象に、FES集積程度とアロマターゼ阻害剤による内分泌治療効果を腫瘍径2cm以上の18病変で検討した。既存の報告例に従い、FES-SUV値のcut off 値を2.0とし、2.0以上あれば内分泌治療効果ありと判定した。その結果、内分泌治療を有効と予測する陽性反応的中率は80%(8症例/ 10症例)内分泌治療を無効と予測する陰性反応的中率は62%(5症例/ 8症例)となった。 (2)偽陽性症例の特徴と対応 FES-SUV値が2.0以上でありながら、内分泌治療効果を認めない2症例を偽陽性例とし、その特徴を検討した。正常のエストロゲン受容体を持ちながら、内分泌治療が無効な乳癌の特徴として、乳癌細胞内のmTORの活性化とプロゲステロン受容体(以下PgR)の陰性化がある。mTORの活性化の指標として、phospho-S6 kinaseとPgRの発現を免疫染色で調べたところ、偽陽性2症例の特徴は、原発乳癌腫瘍内のPgR発現が0%で、かつ、phospho-S6 kinaseの核の濃染所見陽性であった。上記所見を原発乳癌で認めた場合には、FES-PET検査の適応から除外すれば、陽性反応適中率は100%になる。 (3)偽陰性症例の特徴と対応 FES-SUV値が2.0未満でありながら、内分泌治療効果を認めた3症例を偽陰性例とし、その特徴を検討した。3例ともに、骨転移病巣であり、骨転移病巣のCTデータから骨成分割合を測定し、骨成分が転移病巣になかったものと仮定して、FES-SUV値を補正した。FES-SUV値が2.0未満の偽陰性3症例では補正により、FES-SUV値は、すべて2.0以上へ補正され、内分泌治療効果ありと予測できるようになった。この結果、偽陰性症例が消失し、陰性反応適中率は100%になる。
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