肝細胞がん,胃がん検体においてトリプルアレイ解析を実施した。 この結果から、癌抑制遺伝子の候補遺伝子を抽出した。癌部での発現が低下し、その発現低下の機序がメチル化であると予想される遺伝子が約10遺伝子まで絞られた。これらの遺伝子について、細胞株,摘出標本約50例の検体を用いての検討をおこなった。まず、非癌部と癌部での発現の変化をmRNAレベルでは定量RT-PCR、蛋白レベルではウェスタンブロット法、免疫組織化学染色法にて検討した。 SNPアレイを行った症例でLOH領域に存在した遺伝子はこの中には認められず、LOHが発現低下の機序であるとは考えられなかった。がん細胞株でのメチル化はメチル化特異的PCR(MSP)とプロモーター領域のSequence(Bisulfate処理をしたDNAでの)、メチル化阻害剤5-Aza-dcを用いた発現再活性化を行うことにより確認した。細胞株の実験でMSPが正しく働くことが確認できた後、患者検体でもMSPを行い、その頻度を調べた。これらの検討により得られた結果につき、臨床病理学的な所見との相関を統計学的に調べ、予後についての統計解析を進めたところ、肝細胞がんにおいては、BLMH,STEAP4,ESR1,DCDC2,PTK7,DNM3,CCNJ遺伝子について発現の変化やメチル化が臨床病理学的因子や予後との有意な相関を認めたため、バイオマーカーとして利用し得る可能性が示唆されており、論文の作成を行い、国内外の学会での発表を行っている。
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