研究課題
腫瘍細胞は42.5℃以上に加温すると殺傷され腫瘍組織は正常組織に比べて熱に弱いという性質があるが、いまだ温熱療法は外科手術、化学療法、放射線療法に代わるほどの強力な悪性腫瘍治療法にはなっていない。その一因は、腫瘍組織だけを自在に加温する技術が開発されていないことがある。鉄の微粒子であるマグネタイトに交番磁場を照射すると発熱する性質がある。マグネタイトを脂質であるリポソームで包んだナノ微粒子の表面を陽性荷電にした製剤(マグネトリポソーム:Magnetite Cationic Liposome:MCLと略)を腫瘍組織に局所注射し、腫瘍細胞内に鉄を取り込ませ、交番磁場を照射し腫瘍特異的に加温する温熱免疫治療法を開発した。従来から行われている温熱療法では腫瘍のみならず正常組織も同様に加温される。腫瘍特異的に加温するための方策としてMCLと交番磁場照射を組み合わせた治療法の至適条件を開発し臨床応用に結びつけることを目標とし、陽性荷電マグネトリポソーム(MCL)と交番磁場照射を用いた温熱治療の第I相試験を実施した。種々の治療に抵抗性の乳癌、甲状腺癌、軟部肉腫、舌癌を対象とした。最初の3名には5mg/bodyのMCLを再発病巣に局所注射し皮膚表面温度が43度となるよう30分間交番磁場照射した。次の3名には50mg/bodyのMCLを投与し同様に温熱治療を行った。すべての症例において有害事象を認めなかった。治療後2週目に行った生検では腫瘍の壊死などのさまざまな効果が確認されたが、全身的な効果を認めた症例はなかった。基礎研究として当初計画した動物を用いた至適条件の開発は期待した成果が得られなかった。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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