研究概要 |
本研究では甲状腺未分化癌細胞株を樹立、細胞の性質を明らかにするとともに、抗癌剤耐性機構の解析、新たな治療アプローチとしての分子標的薬剤併用による耐性克服の可能性について基礎的研究を行った。22年度に7株の甲状腺未分化癌細胞株(OCUT-1C, -1F, -2~6)を樹立し、遺伝子変異、遺伝子発現の異常、抗癌剤感受性の検討から、臨床所見に合致する抗癌剤耐性を有していることが示された。 耐性克服法の1つとして以前検討したEGFRのTyrosine kinase inhibitor (Gefitinib) はOCUT-2に対して無効であったが、今回の検討からその要因は、PI3K遺伝子の変異によるPI3K/AKT/mTOR経路の異常に起因するものと思われた。この経路の最終段階を阻害することのできるmTOR阻害剤の一種であるeverolimusがOCUT-2の増殖を抑制した。その効果は、PI3K遺伝子の変異をもつOCUT-2に特異的であり、比較的低濃度から濃度依存性に認められ4 nM程度でプラトーに達した。細胞増殖をG2-M期で停止させることで増殖を抑制していることが明らかであった。(日本癌治療学会にて発表、2013年8月に国際内分泌外科学会で発表予定、論文作成中)テロメラーゼの発現と抗癌剤耐性の関連に関しては、明らかな差異を認めなかった。また、網羅的なDNAメチル化解析結果の検討中である。 さらに6株を樹立した。2株は同一腫瘍から得られた形態の異なる細胞として継代している。2株はDocetaxelによる化学療法の前後に採取された細胞であるが、親株と耐性株は全く異なった形態を示す。2株はPaclitaxelによる化学療法の前後に採取された組織より得られた細胞であるが、これらの形態的には全く差がない。いずれも現在性質の確認中であり今後甲状腺未分化癌研究に有用な細胞株として期待できる。
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