研究概要 |
2011年3月までに内科的治療抵抗性の高度肥満症9名に対して腹腔鏡下スリーブ状胃切除術を施行し、検討を行った。患者背景は、平均年齢33歳(24-52歳)、男性7名、女性2名、術前平均体重143kg(99-180kg)、平均BMI47kg/m^2(41-56kg/m^2)、平均健康障害数5疾患(4-7疾患)であった。術後平均体重減少は、術後6か月36kg(22-48kg)、術後1年43kg(29-58kg)、平均超過体重減少率は、術後6か月55%(42-70%)、術後1年69%(49-87%)と著明な減量が得られた。肥満関連健康障害は、全例で改善した。血中グレリン濃度(術前16.2vs.術後10.1pg/ml, p=0.374)は、欧米の報告よりも著明に低値であった。また、胃穹窿部大彎側の胃壁内グレリン陽性細胞数は、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術を施行した高度肥満症患者(3/10HPFs)と胃全摘を施行した胃癌患者(2/10HPFs)とで有意差を認めず、日本人におけるグレリン動態の解析に興味がある結果となった。血中レプチン濃度(30.4vs. 18ng/ml, p=0.165)は、術後に低下する傾向を示した。 手術で得られた脂肪細胞からのDNAの抽出は、通常よりも不純物質が明らかに多く、基礎研究と熟練した技術を要した。われわれは、QIAGEN社製のDNeasy Tissue Kitを用いてDNA抽出行い、代表的な肥満関連遺伝子のmethylationをMethylation-specific PCR(MSP)法により解析中である。また、mRNAによるマイクロアレイ解析では、脂肪細胞から抽出したmRNAを網羅的に検索して脂肪細胞に特異的に発現している、もしくは減少している遺伝子群を同定中である。
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