研究課題/領域番号 |
22591440
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
佐々木 章 岩手医科大学, 医学部, 准教授 (40275540)
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研究分担者 |
若林 剛 岩手医科大学, 医学部, 教授 (50175064)
西塚 哲 岩手医科大学, 医学部, 講師 (50453311)
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キーワード | 肥満症 / 糖尿病 / アディポサイトカイン / レプチン / アディポネクチン / 遺伝子多型 |
研究概要 |
研究では、腹腔鏡下スリーブ状切除術(LSG)を施行した高度肥満症(BMI≧35 kg/m2+肥満随伴疾患)を対象に、メタボリックシンドロームの発症において重要な役割を果たすアディポサイトカインおよび摂食行動の制御にかかわるグレリン、レプチンの動態を解析する(primary point)。さらに基礎医学分野として、肥満症患者の病態形成にかかわる分子機構を解析する目的で、インスリン抵抗性関連遺伝子の遺伝子多型、分離培養した内臓脂肪初代培養細胞におけるアディポサイトカイン分泌能を検討し、さらに肥満関連遺伝子のmethylation解析とmRNAを用いたマイクロアレイ解析を行う(secondary point)。LSG群では、高レプチン、低アディポネクチンの血中動態が明らかで、対照群と比較しても有意な変化であった。レプチンとアディポネクチンの動態はin vivoとin vitroで同様の動態を示しており、これらは内臓脂肪細胞依存性に産生されている可能性が示唆された。糖尿病を合併した症例では、特にPAI-1が有意に高値であった。肥満関連遺伝子多型は、LSG症例でUCP1のAG、GG型を多く認めた。UCP1の多型は、術前BMIが高い傾向が見られたが術後減量効果に差を認めなかった。従って、もともとアディポサイトカイン産生プロファイルが高く設定された病的肥満症では、減量手術によって遺伝子多型にかかわらずアディポサイトカイン産生プロファイルが低下し、もともとの個体に遺伝子多型にかかわらず効果が期待できる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでのところ、順調な症例集積と研究成果であり概ね順調である。しかしながら、臨床研究としては順調な部分がある反面で、手技や技術の成熟を必要とする基礎研究では成果が得られるまでさらなる研究が必要であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
脂肪細胞からのDNAの抽出は、通常よりも不純物質が明らかに多く、熟練した技術を要する。われわれは、QIAGEN社製のDNeasy Tissue Kitを用いてDNA抽出行い、代表的な肥満関連遺伝子のmethylationをMethylation-specific PCR(MSP)法により解析する。また、トランスクリプトーム解析については、mRNAによるマイクロアレイ解析を想定し脂肪細胞から抽出したmRNAを網羅的に検索して脂肪細胞に特異的に発現している、もしくは減少している遺伝子群を同定する。その上で、次世代シークエンス法を用いた肥満関連遺伝子の網羅的なSNPなどの解析を併用して病態の解明に接近する。
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