【目的】膵癌に対する新規治療法の試みとしてMDA7/IL24を用いた遺伝子治療を開発し、膵癌の標準化学療法であるgemcitabineとの併用により膵癌の治療成績を向上させることを目的としている。 【実施計画】1.ルシフェラーゼ発現ハムスター膵癌細胞株(PGHAM-1/Luc)の樹立、およびハムスター膵内移植膵癌モデルの確立、2.高発現の治療用AAVベクターの作製と投与方法の確立、3.PGHAM-1/Luc細胞に対する治療用AAVベクターとgemcitabineの抗腫瘍効果、ならびに相乗効果の検討。 【研究成果】1.当施設で樹立されたPGHAM-1からクローニングで得られた3種類の細胞株にレンチウィルスにてルシフェラーゼ遺伝子を導入し、PGHAM-1/Lucの樹立に成功した。PGHAM-1/Lucをハムスター膵脾葉に移植し、膵癌実験モデルを確立した。膵脾葉への癌生着率は75%、移植1週間後よりIVISにて確認された。4週間後より肝転移が出現し(50%)、その後20%に腹膜播種を認めた。3か月以内に全例死亡した。2.高発現の治療用AAVベクターの作製に成功した。AAVのtype1-12別に発現効率を検討し、AAV-8ベクターを治療用ベクターに決定した。筋肉内・静脈内・門脈内で検討したところ、筋肉内投与で用量依存性・経時的に良好な血清中IL24の上昇を認めた。3.まず、in vitroで抗腫瘍効果を期待できるgemcitabineの至摘投与濃度が決定された。次にin vivoにおけるgemcitabine、および治療用AAVベクターの抗腫瘍効果をそれぞれ検討したところ、両者ともプラセボ群に比し生存期間の改善する傾向が認められ、高度な有害事象はみられなかった。今後はin vivoの実験結果の再現性を確認するとともに、併用投与による相乗効果についても検討する予定である。
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