平成22年度実験結果 ビーグル犬を用いて、全身麻酔下に開腹し、strain gauge force transducerを胃、十二指腸、小腸の6カ所に逢着し、1-2週間の回復期をおき、消化管運動を測定した。空腹期にciplatinを投与すると、投与後5-6時間から胃から小腸に強い異常収縮(持続する律動的収縮)が出現し、これに伴い実験犬は嘔吐した。Cisplatinの投与量は0.3、1.2、3.0mg/kgの3 doseを行ったが、異常収縮の発現頻度と実験犬の負担から1.2mg/kgを選択し、1-2週間に1回のみ投与した。Cisplatin投与後の血中および十二指腸内5HT濃度(HPLCを用いて測定)は投与直後より有意に上昇し、血中では投与後4時間でピークを迎え、投与後24時間で正常値に戻った。十二指腸内の5HT濃度は投与後3時間でピークを迎え、7時間で正常値に戻った。Cisplatinによる異常収縮と嘔吐は迷切犬とatropine前投与のイヌで有意に抑制され、cisplatinによる異常収縮は一部、迷走神経、コリン作動性神経を介した作用である事が予想された。また、5HT3受容体拮抗剤であるgranisetronを前投与すると、cisplatinによる異常収縮は有意に抑制され、血中もしくは腸管内に放出された5HTが異常収縮に関与している事が示唆された。この異常収縮はステロイドやメトロプラミド(プリンペラン)では抑制されなかったが、メトロプラミドの大量投与では嘔吐を抑制した。また迷切犬にgranisetronを前投与し、cisplatinを投与すると、異常収縮は完全に抑制され、嘔吐も見られなかった。
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