研究概要 |
(1)中皮細胞のTGF-βによる間葉系細胞への形質転換 腹膜播種を有しない腹腔内洗浄細胞診陰性である胃癌切除標本(主に早期胃癌)から得られた正常大網から分離した腹膜中皮細胞を培養し、正常腹膜モデルの作成に成功した。この培養系にTGF-βを5ng/ml添加したところ、中皮細胞が形態的に敷石状から紡錘状に変化することを確認した。次いで、TGF-β添加後の中皮細胞は間葉系細胞マーカーであるvimentin,N-カドヘリン、αSMAを発現し、上皮系マーカーであるE-カドヘリンの減弱を確認した。また、invasionアッセイでは、正常中皮細胞は全く浸潤能を示さないがTGF-βで刺激した活性化中皮細胞においては浸潤能を獲得したことも確認した。 (2)活性化中皮細胞と胃癌細胞株との共培養における相互作用 TGF-βによって活性化した中皮細胞と胃癌細胞株MKN45を分離チャンバーにて共培養(細胞上清のみ共有)したところ、MKN45単独培養と増殖能は同じであった。しかし、両者を同一チャンバー内で接触培養したところ、MKN45の増殖能は賦活化されていた。混合培養された両細胞群を抗体ビーズ法で再度分離し、それぞれからウェスタンブロット法でEMT関連タンパクの発現を確認した。さらに3次元ゲル内でコロニー形成能を検討したところ、MKN45単独や成城中皮細胞+MKN45ではコロニーを形成できなかったが、TGF-βによる活性化中皮細胞との混合細胞群ではコロニーを形成し、造腫瘍能があることが証明された。
|