本研究は胃癌幹細胞における特異的マーカーの同定およびWntシグナルをはじめとした胃癌幹細胞における浸潤・転移能に関わる分子機構解明を目的とし本年度は以下の通り実施した。 1.胃癌幹細胞集団の特異的マーカーの同定:複数の胃癌細胞株を用いてHoechst 33342色素の排出能力や細胞表面タンパクの発現およびaldehyde dehydrogenase (ALDH)活性をマルチカラーFACSを用いてソーティングを行った。その結果、CD24(-)の細胞集団において幹細胞様特性があることを見いだした。現在in vivoにてCD24発現の有無による腫瘍形成能・転移能を検討中である。またALDH活性の程度とCD24発現間にも差を認めており、これらの検討を進めることで新たな胃癌幹細胞マーカーの同定に繋がるものと考えている。 2.胃癌幹細胞におけるWnt経路の分子機構の解明:胃癌幹細胞においてWntシグナル発現と細胞増殖能・転移能について検討した。胃癌細胞株にWnt5aを強制発現させると細胞運動能および浸潤能が亢進した。さらにWnt5a強発現によりCD44発現の減弱が認められており、これまでの報告で胃癌幹細胞のマーカーの1つとされるCD44とWnt5aシグナル間に何らかの関連があると考え、シグナル経路などさらなる検討中である。 今後は同定された胃癌幹細胞株を用いて浸潤・転移機構に関わるシグナル制御を試み新たな制癌療法への基盤となる研究を行う予定である。
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