研究概要 |
本年度は抗癌剤(CDDP,5-FU)を単独あるいは併用添加し,食道癌細胞株におけるDNA損傷の指標であるγH2AXとDNA修復蛋白Rad51 focusの量的変化(kinetics)と細胞内動態を経時的に測定し,抗癌剤併用の相加・相乗を評価するとともに,各抗癌剤の細胞内作用部位を明らかにすることを目標とした。得られた結果は以下の通りである。 1)代表的な食道扁平上皮癌細胞株であるTE1およびTE11を用い,CDDPおよび5-FUに対する感受性を検討したところ,TE1がTE11と比較して高感受性を示した。 2)TE1,TE11ともにγH2AXフォーカス陽性細胞数は抗癌剤処理後およそ12時間まで増加し続けるが,TE11ではその後速やかにフォーカスの消退を認めるのに対して,感受性の高いTE1ではさらに36時間までそのフォーカス陽性細胞数は増加し続けた。 3)TE11では経時的なRad51フォーカス陽性細胞数の増幅が認められたが,TE1においてはcontrolと比較してほとんどRad51フォーカスの発現は認められなかった。 以上の結果より,γH2AXの経時的変化が抗癌剤感受性と相関することが新たに明らかとなり,今後抗癌剤感受性のバイオマーカーとなる可能性がある。また,Rad51の発現低下によるDNA修復能の低下が抗癌剤感受性と関わっている可能性が示された。 引き続きγH2AXおよびRad51蛋白を中心に,抗癌剤によるDNA損傷およびDNA修復のメカニズムを解明し,DNA修復蛋白をターゲットにした臨床応用を目指したい。
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