研究概要 |
【目的】癌化学療法による消化管毒性は患者の栄養状態を損なう要因となる。Diamine Oxidaseは小腸の粘膜上皮細胞内に存在する酵素で、腸管の萎縮や上皮の損傷などがあると活性は低下し、血中Diamine Oxidase活性(DAO)も低下するため、小腸粘膜の形態的変化の指標とされる。 平成23年度は、臨床的検討として、食道がん患者を対象に、がん化学療法をおこなう患者におけるDAO活性の推移の検討およびGFO投与の効果の検討を行なった。 【方法】化学療法の適応となった食道癌患者38例を対象にした。化学療法はFP療法(cisplatin; 70~80mg/mm2: day1, 5Fu; 700~800mg/mm2: day1~5)を行った。DAOは投与前、投与終了後、休薬期間後に測定、観察期間中の消化管毒性との関連について検討した。また、上記化学療法中にGFOを内服させ、消化管毒性の頻度やDAO活性の推移を検討した。 【結果】DAOは投与前・終了後、休薬後が、5.22,4,07,4.80(unit/L)と、投与後に有意に低下し(p=0.0013)、休薬期間後には回復,していた(p=0.018)。消化管毒性は、有/無:15/23例で、消化管毒性有群のDAOは、投与前、投与後、休薬後が、5.60、3.66、4.66と投与後に有意に低下するのに対して、消化管毒性無群は、それぞれ、4.60、4.70、5.00と低下傾向を認めなかった。投与前値を基準とした%DAOを比較すると、消化管毒性有/無で、投与後、休薬後がそれぞれ、70.9/104.8%、91.0/114.5%で、消化管毒性有群における投与後の%DAOが有意に低かった。7例の食道癌化学療法患者においてGFOの投与と消化管毒性の出現には有意差は認めなかった。しかしDAO活性は化学療法後も低下認めなかった。 【結論】食道癌化学療法においてDAOは、消化管毒性有群で投与後に有意に低下していたが、消化管毒性無群では変化がなかった。GFO投与はまだ症例が少ないが、DAO活性の低下を認めないため、GFO投与が消化管毒性の出現を予防する可能性がある。
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