本年度は胃癌手術症例を対象とし、手術前後の血管内皮前駆細胞(EPC)を含む骨髄由来幹細胞(Bone marrow-derived stem cells: BMSCs)とサイトカインを経時的に測定した。対象患者は、当科で手術を施行した胃癌症例で、平成25年3月の時点では11症例のみだった(目標は60症例)。手術直前と手術後1日目に採血を行い、比重遠心を行った後に、BMSCsとして末梢血中C-kit陽性細胞、CD34陽性細胞、C-kit/CXCR4陽性細胞、CD34/CXCR4陽性細胞をフローサイトメトリーで測定し、サイトカインはVEGFとIL-6をELISA法で測定した。手術前と比較して、手術後1日目の末梢血中C-kit陽性細胞、CD34陽性細胞、C-kit/CXCR4陽性細胞、CD34/CXCR4陽性細胞は有意な増加は認めなかった。サイトカインに関しては、手術後1日目でVEGFとIL-6は共に有意に増加した(p>0.05)。 以上の結果から、当科での胃癌手術による手術侵襲は、炎症性サイトカインであるIL-6の面では十分な手術侵襲と判断できるが、有意なBMSCsの動員は確認できなかった。しかし、血管新生に関与する末梢血中のVEGF濃度は上昇していたため、手術侵襲は血管新生に関与している可能性が示唆された。
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