研究分担者 |
夏越 祥次 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (70237577)
石神 純也 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (90325803)
北薗 正樹 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (30398276)
内門 泰斗 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 医員 (30464465)
喜多 芳昭 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 医員 (30570692)
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研究概要 |
腫瘍細胞株を用いた細胞実験,動物実験では,リンパ管新生因子であるVEGF-CないしVBGF-Dの導入・発現はリンパ管の増生,つまりリンパ管新生を促しリンパ節転移を誘導した。またLYVE-1抗体で標識した新生リンパ管をVEGFR-3抗体の二重染色で観察すると共発現が著しいことが確認される。これらは前年度から継続して行われたもので,実験結果の再現性が認められた。消化器癌の臨床検体を用いた検討では,前述の基礎実験結果と同様にリンパ節転移例ではリンパ管新生が顕著であった。一方,腫瘍細胞の活動性を評価するため原発巣におけるKi-67およびCaspase-3による免疫染色を行ったが,リンパ節転移の有無別に有意な差は確認されなかった。悪性腫瘍の微小環境として細胞接着:分子であるE-cadherinとsnailファミリーに属するSlugの発現について検討すると,E-cadherinの減弱とSlugの発現はリンパ管侵襲,リンパ節転移と密接に関連していた。また食道癌と胃癌組織標本で検討したBMP7の発現はリンパ管侵襲,リンパ節転移を含めた腫瘍の悪性度と相関していた。regulatory T cellの腫瘍内浸潤を上部消化管悪性腫:瘍の臨床検体を用いて検討するとregulatory T cellの腫瘍内浸潤が少ないものほど胃癌術後の予後は良好であった。 以上の結果から,悪性腫瘍の進展・転移,特にリンパ節転移にはリンパ管新生が明らかに関与しており,また検討した各種分子マーカーも腫瘍微小環境において少なからずリンパ節転移の形成過程に重要な役割を果たしていることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
現段階で本研究結果の具体的な臨床応用には至っていないが,今後,ステップアップするための基礎データの蓄積が可能と思われる。これまでの細胞実験,動物実験で得られた結果をもとに,臨床で集められた検体を用いて蛋白・遺伝子解析を行っていく。最終的には悪性腫瘍の転移形成におけるリンパ管薪生および微小環境の役割を理論的に体系づけて考察していく。
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