近年、TNF-α が癌組織自体により生産され、内因性の腫瘍プロモーターとして機能することが解明されつつある。本研究では、"Claudin-1 は TNF-α による胃癌腹膜転移進展シグナルにおけるメディエーターとして機能する"という実験仮説の検証を行った。胃癌細胞株(MKN28、MKN45)を TNF-α 処理したところ、Claudin-1 の発現レベルが上昇した。Claudin-1 siRNA を導入した MKN28 において、TNF-α 処理後の Claudin-1 発現増強効果が抑制された。TNF-α 処理、Claudin-1 siRNA 導入の有無別に、DNA マイクロアレイによる網羅的解析を試みたところ、TNF-α により発現変化した遺伝子のうち約 70%が、Claudin-1 のノックダウンにより抑制された。また、 microRNA マイクロアレイを行ったところ、 TNF-α により発現変化した microRNA のうち約 87%が、Claudin-1 のノックダウンにより抑制された。また、Claudin-1 siRNA 導入細胞における、細胞増殖抑制効果、アポトーシス増強効果、細胞遊走・浸潤能抑制効果を見出した。 DNA マイクロアレイの結果を Pathway 解析したところ、 MMP7、 TGFBR1、TNFSF10 を含む Cellular movement network が Claudin-1 に関連したトップネットワークとして抽出された。これらの結果より、Claudin-1 が単なる密着結合蛋白としてではなく、TNF-αによる腫瘍活性化シグナルを伝達するメディエーターとして機能することが明らかになった。
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