癌関連遺伝子SMYD2と肝癌の関連について解析を進めてきた。肝癌はSMYD2の坐位ずる1q32に増幅を持つ頻度が高く、細胞株レベルでは腫瘍の増殖、悪性度との関連を示すことができた。今回、国立がんセンター津田均博士の指導のもと、肝癌臨床検体においてSMYD2の生物学的意義を明らかにすべく解析を行ったが、現在のところ意義を見出せていない。今後、引き続き染色法等の検討を繰り返し行い、発現意義を明らかにする予定である。 血漿中遊離DNAを用いたSMYD2のバイオマーカーとしての意義についても検証をすすめてきた。異数性、治療・進行度による全DNA量の問題を回避し、単位染色体あたりの増幅コピー数を評価するために、SMYD2(1q32)のReference geneとして同染色体腕上に存在する非増幅遺伝子であるであるRUNX3(1p36)を用いて、血漿遊離DNAのコピー数をSMYD2/RUNX3 ratioで測定することとした。食道癌患者及び健常人の比較では、SMYD2/RUNX3 血漿遊離DNAコピー数は健常人より高値であった(p=0.16)。予後解析では、SMYD2高コピー数群の予後が不良であった(p<0.05)。多数例での解析を進めて早期診断・予後診断バイオマーカーとして有用性を検証を行う。 胃癌細胞株を用いて、SMYD2高発現細胞株に対してsiRNAを用いた遺伝子ノックダウン実験による5-FU、CDDPの抗癌剤感受性遺伝子としての評価を行った。しかし、現在のところ抗癌剤感受性遺伝子としての意義を明らかに出来ていない。今後は、食道癌や胃癌の臨床検体を用いて、臨床データと比較して発現意義の検証を続ける予定である。 今年の研究成果を更に発展させ、臨床応用を目指して研究を継続する予定である。当研究成果は国内外学会、欧文誌に積極的に報告する予定である。
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