【背景】樹状細胞(DC)は癌抗原を取り込み、成熟化し、cytotoxic T lymphocytesを誘導する機能をもつ専門的抗原提示細胞である。一方で、腫瘍免疫抑制機構にはregulatory T cell(T reg)が関わることが知られており、T regを増殖させるDC(tolerogenic DC)との関連も示唆されているが、胃癌においてはその機構は解明されていない。また自己免疫機能には胸腺やリンパ節組織内に発現するautoimmune regulator(Aire)が重要であることが証明されてきており、Aireが低下することによって、DCの抗原提示能が低下することも示唆されている。【目的】スキルス胃癌のDCに対する直接的作用と腫瘍免疫抑制機構に及ぼす影響について検討した。【方法】スキルス胃癌原発巣、および転移リンパ節の抗CD11bおよび抗CD11c抗体による免疫組織染色を行った。胃癌細胞株の上清中の免疫抑制性サイトカインの産生をELISAで検討した。それらの胃癌細胞上清の存在下でDCを培養し、DCのphenotypeの変化、成熟化の影響について検討した。次に胃癌細胞上清存在化でのDCのIL-10産生能およびAireの発現量の変化について検討した。【結果】スキルス胃癌原発巣、および転移リンパ節内にCD11bおよびCD11c陽性DCの浸潤を認めた。胃癌細胞株はTGF-bなどの免疫抑制性サイトカインの産生していた。スキルス胃癌細胞株によってDCのMHC class IIの発現は低下し、programmed death-ligand 2(PD-L2)の発現は増強した。またDCのIL-10産生能はOCUM-8の上清添加により増強した。DCのAire発現量はスキルス胃癌細胞上清添加により減少した。
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