研究概要 |
【背景】癌細胞自身のMHC Class I発現低下は、癌の免疫逃避機構の一因となる。胃癌を含むいくつかの消化器癌において、原発巣のMHC class Iの発現低下は、重要な予後因子となることが報告されている。PSKはカワラタケより抽出された糖蛋白で免疫増強効果を有し、胃癌治癒切除後の補助療法として保険適応となっている。【目的】胃癌原発巣におけるMHC class I発現の予後因子としての意義を検討し、術後補助療法におけるPSKの適応について検討した。 【対象と方法】1995年より2008年までに根治切除し術後補助療法の適応となるStageII/III胃癌349例を対象とした。原発巣およびリンパ節転移病変におけるMHC class I発現を免疫組織染色にて陽性と陰性に分類し、臨床病理学的因子について検討した。同時にPSK投与有無の2群に分類し、生存期間について検討した。【結果】原発巣においてMHC class I発現陽性は193例(55%)、陰性は156例(45%)であった。陰性例中、87%の症例にリンパ管侵襲が認められた。MHC class I発現陽性例では、PFS,OSともに陰性例と比較して有意に良好であり、MHC Class I発現は独立した予後因子であった。リンパ節転移を認めた症例206例について、転移巣のMHC Class I発現は、原発巣の発現が陽性であった症例中63%がリンパ節転移巣で発現が陰性転化した。PSK投与群と非投与例群との比較では、高度リンパ節転移例(pN2以上)において、PSK投与群が有意に予後良好であった。 【結論】胃癌原発巣のMHC class I発現低下は、リンパ管侵襲、リンパ節転移と相関しており、独立した予後不良因子である。PSKはリンパ節転移陽性、MHC Class I陰性例に効果的である可能性が示唆された。
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