研究課題
我々はこれまで胃癌の浸潤・転移におけるMMPの役割を明らかにし、MMP阻害の治療的応用可能性について報告してきた。また既に上皮間葉移行(Epithelial Mesenchymal Transi-tion: EMT)という新たな視点から消化器癌の研究を開始し、本年度の研究ではepithelialな性格を持つ胃癌細胞株TMK-1にEMT inducerのHOXB9を遺伝子導入しその変化を検討した。特に、EMTと浸潤転移能の関連を評価した。胃癌切除検体におけるEMTの組織学的検討では、 既に倫理委員会で承認を得た手順で、当院における胃癌手術検体を用いて、EMT関連分子(HOXB9など)の発現と、癌細胞の浸潤形態とを比較検討した。さらに臨床病理学的因子(T, N, M, ly, v, 予後など)との相関をみた。特にsmおよびmp程度に浸潤した癌についてはheterogeneityに注目して検討し、EMTの初期の変化を捉えた。具体的には、胃癌の分化度との関連が注目され、中分化管状腺癌と充実型低分化腺癌において特徴的なHOXB9の発現を認めた。In vivoでは、免疫不全マウスのxenograftモデルで、腫瘍形成能、組織学的な浸潤像を評価した。今回の検討では腫瘍の増殖能が創底に比し低く、評価困難であった。そこで胃癌培養株へ新たに遺伝子導入を行い、新たな実験系を構築する方針とした。またTet on/offによる遺伝子発現調節だけではなく、HOXB9の比較的高発現株であるMKN-74に対してshRNAを用いたknock outによる評価を行う方針とした。
2: おおむね順調に進展している
震災の影響により研究の進展に影響がみられたが、その後、in vitro、in vivoともに研究環境が復活し、おおむね順調に進展した。臨床検体については、適切な手術症例がなく、若干入手に難渋したが、最終的に69例の検体が得られ、免疫組織化学的評価と臨床病理因子との比較が可能となった。
Epithelialな性格を有する胃癌細胞株のTMK-1にHOXB9を遺伝子導入して行った実験では、元来の胃癌の性格が大きく変化する可能性が考えられた。そこで、今後は、Mesenchymalな性格を有する胃癌細胞株のMKN-74でHOXB9の発現をknock downすることで、多面的に胃癌におけるEMT関与を明らかにする予定である。
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