研究課題
これまでに我々はin vitro studyにおいて新規NF-κB阻害剤DHMEQ(Dehydroxymethylepoxyquinomicin)が、大腸癌細胞株HT29からの炎症性サイトカインであるIL-8産生とRAW264.7マクロファージ類似細胞株からのIL-6およびTNF-αの産生を有意に抑制することを示した。また、マウス薬剤誘発炎症性腸疾患モデル(DSS腸炎モデル)を用いた同剤のin vivo studyにおいて治療群は非治療群と比較して臨床所見(血便・下痢・体重など)、大腸浮腫、組織障害の有意な改善を認め、作用幾序としてDHMEQはF4/80陽性マクロファージ・CD4陽性Tリンパ球の浸潤を抑制し大腸組織の炎症性サイトカインであるTNFα、IL6、ILI7、IFN-γの発現抑制効果を有することを示した。更に、マウスハブテン誘発IBDモデル(TNBS腸炎モデル)においても、DHMEQ治療群は非治療群と比較して有意な体重減少、大腸浮腫、肉眼所見、組織障害の改善を認めていた。また、DHMEQの抗炎症作用についてより直接的な作用幾序を解明するために、DSS腸炎モデルを用いた腸管組織の免疫染色を行い腸管免疫細胞および腸管粘膜上皮細胞におけるNFκBの細胞内分布について検討したところ、DHMEQがNFκBの核内移行を抑制する事を確認できた。また、DSS腸炎モデルにおける既存の炎症性腸疾患治療薬である5-Ainosalicylic acid(5-ASA)との比較試験において、DHMEQはより効果的にDSS腸炎モデルの腸炎を抑制することが示され、DHMEQの臨床応用への可能性を大いに期待させた。本年は、以上の実験結果をまとめ、また追加実験を行い、英文ジャーナルJournal of Crohn and Colitisに投稿し2012年3月に掲載された。
すべて 2012
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Journal of Crohn's and Colitis
巻: 6 ページ: 215-225