研究概要 |
平成22年度の研究目的である、クローン病動物モデルの腸管血流増加機序に大建中湯の主成分であるhydroxy-α-sanshool(HAS)が寄与していること、また、内因性アドレノメデュリン(ADM)の活性化が重要であることを証明した。さらに詳細な機序解明として、生体温度センサーであるtransient receptor patential(TRP)チャンネルに着目し、TRPA1を介するADM産生機構やセロトニン放出に基づく腸管運亢進機序を明らかにした。すなわち、管腔内に投薬された大建中湯が腸管上皮細胞に発現するTRPA1チャネルに作用し、血管拡張作用を有するADMの細胞外放出を惹起することが示された。この機序は、ADM中和抗体、ADM拮抗剤或いはTRPA1拮抗剤を用いた血流測定系や、腸管上皮細胞の培養系で詳細に検証し支持された。もう一つの腸炎抑制効果の検証では大建中湯のマウス抗腸炎作用がADHの抗体あるいは拮抗剤前処理で消失したことから、大建中湯の薬効発現に内因性ADMの関与が示唆された。大腸粘膜内サイトカイン(IFNγ,TNFα)と血中急性期蛋白(SAN)は、大建中湯投与により減少し、ADM拮抗剤前処理でその薬効が消失したことから大建中湯の抗炎症性作用がADMを介して発現した抗サイトカイン作用と抗炎症性作用によって発現していると示唆された。さらに炎症による癒着も大建中湯のADMを介した同様の機序によって軽減されることも明らかにした。
|