研究課題/領域番号 |
22591475
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
河野 透 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (60215192)
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研究分担者 |
鈴木 達也 旭川医科大学, 大学病院, 医員 (40516415)
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キーワード | 大建中湯 / クローン病腸管 / カルシトニン遺伝子関連ペプチド / アドレノメデュリン / トランジェントレセプターポテンシャル / TNFα / ハイドロキシαサンショール / 6ショーガオール |
研究概要 |
平成23年度に計画実行された研究成果から大建中湯は腸管血流コントロールに重要な二つの内因性カルシトニンファミリーペプチドであるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)とアオレノメデュリン(ADM)を介する血流改善効果があり、特に繰り返す炎症により腸管壁が損傷を受けるクローン病腸管では粘膜細胞の再生は通常1週間程度で回復するが、神経組織の回復は通常月単位から年単位の長期に及ぶため、腸管血流コントロールに最も重要なCGRPは神経組織で産生されることから、クローン病腸管において顕著に減少し、血流は正常値の半分程度まで落ち込んでいる。大建中湯は再生した粘膜上皮細胞からADMを分泌、産生を促し、CGRP減少に伴う血流低下を相補的に補うことで減少した腸管血流を正常化できることを明かにした。その作用機序として大建中湯の成分であるハイドロキシαサンショールや6ショーガオールが腸管粘膜上皮細胞に発現するトランジェントレセプターポテンシャルTRPチャネルであるTRPA1を介してCa依存性のADM分泌を行っていることを明らかにした。これまで、TRPチャネルが上皮細胞に発現している事は報告されていたが、その生理学的な意義に関しては不明であった。今回われわれはTRPチャネルがADM分泌に関与し、血流コントロールに寄与していることを世界で初めて明らかにできた。腸炎モデルにおけるサイトカインの検討から大建中湯はTNFα、インターフェロンγ産生を特異的に抑制することを明らかにした。TNFαはクローン病治療における最重要標的であり、その抗体は臨床的に使用され劇的な効果を現している。一方、副作用や高額医療のため使用が制限されることも少なくない。大建中湯によるTNFα産生抑制効果は抗体治療と異なり、副作用もなく、高額医療にもならない。現在、アメリカFDAで臨床治験薬TU-100として合剤としてアメリカで初めて認可され、クローン病に対する大建中湯の臨床治験が2011年9月から開始された。現在、クローン病腸管縫合部の血流を測定し大建中湯の効果を検証中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トランジェントレセプターポテンシャルチャネルを中心とした機序解明が必要だったが、おおむね順調に計画通り推移している。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度である本年度ではクローン病動物モデルにおける腸管縫合部の血流測定と治癒促進効果の検証を前年度同様に進める。
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