血管新生因子の一つであるvascular endothelial growth factor (VEGF)は、数多くの腫瘍の血管新生に強く関与していることが示されてきた。その結果、VEGFの中和抗体であるBevacizumabは、すでに大腸癌、肺癌、乳癌で延命効果が示され臨床応用されている。しかしBevacizumab治療における最も大きな問題点は、耐性が生ずることと考えられる。Bevacizumabの耐性機序を解明し、それを克服するため下記の研究を行った。 平成23年度から、実際にBevacizumabを使用している臨床症例において、Bevacizumabが耐性となったと考えられる症例において、患者本人の了解を得て治療前後の腫瘍の採取を施行してきた。これらの腫瘍に対し網羅的遺伝子解析を行い、治療前後で何らかの変化が生ずるか否かを検討した。 その結果、いくつかの遺伝子の亢進、減弱が認められたものの、残念ながら治療前後で共通する遺伝子の変化を指摘することはできなかった。今回の研究の問題点として、臨床例の場合、腫瘍の切除が可能なのは、原発巣が切除されていないか、比較的採取が容易な浅い場所のリンパ節などに限定されるため症例の収集が困難であることと、Bevacizumab治療はOxaliplatinやCPT-11、5-FUなどの併用が不可欠であるため、耐性になった時点を見分けることが困難であること、さらにこれら抗癌剤の耐性に関する遺伝子が含まれてしまうなどがあげられる。今後こういった問題点を踏まえ、Bevacizumab耐性に関する遺伝子の特定に関する研究を進め、その克服を目指したい。
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