大腸癌は血行性転移、肝転移をきたしやすく、その克服が生存率向上の鍵と考えられている。2001年にFerraraらがVEGFとは相同性が無いEG-VEGF (endocrine glands-derived-venous endothelial growth factor)遺伝子をクローニングし、私どもはその翌年より大腸癌とEG-VEGF遺伝子の関連性を検討し、世界に先駆けて実験系・臨床系において血行性転移に重要な役割を示すことを報告している。 今回はその研究中に大腸癌においてsplicing variantの異なるVariant EG-VEGF遺伝子が存在することを世界で最初に確認した。 現在当科独自のspecific primerを用いたヒト大腸癌におけるVariant EG-VEGF遺伝子の発現について検討中であるが、血行性転移を起こしている転移巣において強発現している症例を確認している。(臨床病理学的検討ならびに予後との相関について検討中である。) また大腸癌細胞内発現型ベクターにVariant EG-VEGF cDNAを挿入したベクターが完成しており、低Variant EG-VEGF遺伝子発現型の大腸癌細胞株に導入したところ細胞増殖能が亢進することが認められた。 大腸癌においてVariant EG-VEGF遺伝子が腫瘍細胞の悪性度を高くする因子である可能性が考えられ、現在更なる研究を進めている。
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