我々が提案するLymph node navigation surgeryは、術中にリンパ節転移を診断しながら手術操作を進めるというものでありリンパ節転移の術中評価法として腫瘍の蛍光診断に着目した。 ヘム合成の前駆物質であるアミノレブリン酸(5-Aminolevulinic acid; 5-ALA)は、その代謝産物であるプロトポルフィリンIX(Protoporphyrin IX; PPIX)が腫瘍細胞特異的に蓄積し青紫色の励起光により赤色の蛍光を呈する性質を持つ。マウス大腸癌リンパ節転移モデルにおいて5-ALAを用いた蛍光観察により転移リンパ節の同定が可能かどうかを検討した。 検出機器としてはすでに市販されているKarl Storz社製のD-light Systemを使用した。この機器は通常内視鏡の光源および検出器にPPIXの蛍光波長を特異的に検出できるフィルターを組み込んだものである。 マウスの虫垂壁に、ヒト大腸癌細胞株HCA7の野生株あるいはGFP標識株をそれぞれ1×106個接種した。約3週間後に5-ALAを40mg/kg経口または腹腔内投与し、3ないし6時間後にD-Light Systemを用いて蛍光観察を行った。すべてのマウスの腸間膜内に多数の小結節が形成された。これらはGFP標識株接種群ですべてGFP陽性であり、病理学的にも転移であることが確認された。経口投与群では原発巣や腹壁転移など一部の癌組織に淡い蛍光を認める場合もあったが、腸間膜内の結節に蛍光は認められずリンパ節転移の同定は困難であった。一方腹腔内投与群では、腸間膜に生じた結節すべてに一致する赤色蛍光を認め蛍光強度は投与後3時間の方が6時間よりも強い傾向にあった。 5-ALAを用いた蛍光観察によるリンパ節転移診断については臨床研究として当院倫理委員会のほうに現在申請中であり今後はさらに詳細な検討をしていく予定である。
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