研究概要 |
本研究の目的は、大動物において、SISにより再生された小腸が、本来の生理的な機能を有しているかの基礎的評価を行ない、再生小腸伸張術が臨床で応用できる可能性を検討することにある。本年度は以下について、研究を行なった。 1.大動物におけるMSCシートの作製 マイクロミニピッグの大腿骨から骨髄液を採取し、我々がこれまでラットで行なってきた同様の方法でMSCを細胞シートとして回収することを試みた。MSCの採取・分離・培養は可能であったが、これを細胞シートとして回収することができなかった。 2.大動物における小腸再生伸張術の実施 大動物おける小腸欠損をSISで修復・再生できるかをビーグル犬を用い検討した。ビーグル犬の小腸長軸に5cmの小腸半周全層欠損を作製し、SISにて置換・修復した。 3.再生小腸のin vivoにおける機能評価 ビーグル犬は生存し、6カ月後に再生小腸のin vivoの機能評価を行なった。小腸再生部ならびに同部をはさんで口側、肛門側にフォーストランスデューサーを取り付け、空腹期消化管運動(MMC)を観察したところ、口側から肛門側へ伝播するような蠕動収縮を認めた。このことはin vivoにおいて小腸再生が機能していることを示している。 4.再生小腸のin vitroにおける機能評価と組織学的評価 ビーグル犬の再生小腸のin vitroにおける機能評価と組織学的評価を行なった。In vitroの機能評価では、再生筋肉片は薬物・電気生理学的検査にて反応を示した。また組織学的でも平滑筋層の再生が観察された。 5.SISの試作 Badylakら(Badylak, et al. J Surg Res, 1989)の方法に準じ、マイクロミニピッグの小腸からSISを作製し、その手順とコツを習得した。
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