本研究の目的は、大動物において、成長因子を包含した細胞外マトリクスであるブタ小腸粘膜下組織(SIS)により再生された小腸が、本来の生理的な機能を有しているかの基礎的評価を行ない、再生小腸伸張術が臨床で応用できる可能性を検討することにある。これまでの研究成果を第20回ヨーロッパ消化器病週間で発表した。 1. 大動物における小腸再生伸長術の実施:大動物おける小腸欠損をSISで修復・再生できるかをビーグル犬を用い検討した。ビーグル犬の小腸長軸に5cmの小腸半周全層欠損を作製し、SISにて置換・修復した。 2. 再生小腸のin vivoにおける機能評価:ビーグル犬は生存し、6カ月後に再生小腸のin vivoの機能評価を行なった。小腸再生部ならびに同部をはさんで口側、肛門側にフォーストランスデューサーを取り付け、空腹期消化管運動(MMC)を観察したところ、口側から肛門側へ伝播するような蠕動収縮を認めた。このことはin vivoにおいて小腸再生が機能していることを示している。 3. 再生小腸のin vitroにおける機能評価と組織学的評価:ビーグル犬の再生小腸のin vitroにおける機能評価と組織学的評価を行なった。in vitroの機能評価では、再生筋肉片は薬物・電気生理学的検査にて反応を示した。また組織学的評価でも平滑筋層の再生が観察された。 以上の結果をJournal of Surgical Researchに投稿した。
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