直腸の切離吻合モデルラットにおいてセロトニン4受容体の刺激薬であるモサプリドの局所投与と飲水投与後、1週目、2週目における腸壁内神経の再生・新生過程を免疫組織学的に観察した結果、吻合部を越えての腸壁内神経の再生が、同じように起こることを見いだした。再生した神経は、主としてNO作動性神経で、一部コリン作動性神経を含む結果であった。さらに、吻合部の肉芽組織切片を作製して、免疫染色を行った。抗PCNA抗体(細胞増殖マーカー)、抗DLX2抗体(神経幹細胞のマーカー)、抗SR4抗体(セロトニン4受容体)および抗NF抗体で陽性に染色された細胞の数を求めたところ、モサプリドにより、それらの陽性細胞数は有意に増加しており、神経幹細胞の動員と神経細胞への分化が認められた。 ついで、神経幹細胞がどこから由来するかを検討するために、モサプリドを吸収したスポンゼルを皮下に植え込み、移動してきた細胞の免疫染色とRT-PCRを行い、神経堤由来の神経幹細胞が 吻合部に動員されてくる可能性を検討した結果、皮下に植え込んだスポンゼルに向かって神経幹細胞が動員されてくるのが促進されていることが示された。 新生した神経細胞のソースを明らかにするため、間葉系幹細胞とHSVZ由来の神経幹細胞の培養を行いモサプリドの効果を調べた。神経幹細胞の神経軸索の伸長は促進したが、間葉系幹細胞には効果はなかった。従って、間葉系幹細胞よりは神経幹細胞の方が、新生神経細胞のソースの可能性が高いと考えられる。この神経幹細胞からRNAを抽出してマイクロアレイ解析を行った。その結果、モサプリドを作用させると、Htr4 (セロトニン4受容体)とGfrα1(GDNF受容体)のRNAは、軽度に増加していたが、Ednrb とRet(は全く変化なかった。以上の研究成果を研究分担者の高木が第90回日本生理学会大会入澤賞シンポジウムで発表した。
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