研究概要 |
CXXC5は,DNA修復遺伝子の1つであるMLH1遺伝子のプロモーター領域に結合し転写を正に制御するタンパクとして,我々がごく最近見いだした転写制御因子である.本研究では,CXXC5によるMLH1転写制御を分子レベルで明らかにすることで,生理学的条件下でのMLH1転写制御機構を解明する.次いで,大腸癌をはじめとした病態でのMLH1発現抑制の仕組みを理解する.さらに,制御因子異常を指標とした病理診断や病態予測への応用研究の基盤を築くことも目指す.前年度は,CXXC5と相互作用しMLH1の転写制御に関わる因子を検索し,候補因子としてSYF2およびhnRPH1を見いだした.本年度は,CXXC5によるMLH1転写制御のより詳細な解析と,新規に見いだした2つの因子の役割の検討を行った. SYF2とhnRPH1のMLH1転写制御活性やDNA結合能を調べた結果,以下の知見を得た. 1)CXXC5は単独で,hMLH1遺伝子上流のcis-elementであるFP3-CAT124部位に特異的に結合する. 2)SYF2とhnRPH1はFP3-CAT124への因子の結合を増強する. 3)これら因子は協調してhMLH1の転写を正に制御する. これらの結果から,CXXC5を含む複合体による転写制御はSYF2とhnRPH1によって正にコントロールされていると考えられた.また,MLH1発現抑制の要因の1つとして知られる低酸素でのこれら因子の発現を調べたところ,いずれもタンパクレベルで発現が低下することが明らかとなった.今後はMLH1発現低下に対するこれら因子の役割について検討を行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では次の4項目を具体目標として計画した.1)CXXC5を含む転写制御複合体の同定,2)複合体各因子のMLH1発現抑制に対する影響の検討,3)複合体の病態への関与の検証,4)転写制御複合体の新規ターゲットの網羅的検索.本年度までに3項目を達成しており,概ね順調に進展しているといえる.
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