意義と目的:我々は、これまで食物の消化・吸収と消化内容物の運搬機能を持つ全周性腸管の再生を困難にしてきた1)再生腸管の瘢痕化2)腸管平滑筋再生不良の問題を克服し、蠕動能を有し瘢痕狭窄が無い全周性食道の再生に成功した。本研究はこれを発展させ前述の腸管再生を困難にしている最大の問題である3)腸管上皮の再生に対し、優れた組織・細胞再生誘導能や多分化能を持つ羊膜及び羊膜幹細胞を用いて、消化・吸収能と蠕動能を持つ全周性腸管の再生を動物モデル(ラット)において行うことである。 実験方法:I.in vitroにて羊膜上でi)腸上皮細胞一(腸上皮下)筋線維芽細胞ii)羊膜上皮幹細胞-筋線維芽細胞iD腸上皮細胞-羊膜間葉系幹細胞を供培養しその状態を観察する。II.前述の供培養に平滑筋細胞を加えたロール状の複合細胞シートを実験動物の腹腔内にて大網にて熟成後小腸と吻合し、腸管再生の状態と栄養状態を観察する。 結果:22年度は、I.についてその準備と実験を行った。まず筋線維芽細胞の単離・培養を酵素法と組織片培養法にて行い、その手技・方法を確立し、後者においてより長期の継代培養が可能なことを確認した。腸上皮細胞はその単培養が困難であるため、単離法の手技を確立した。羊膜上の共培養については、羊膜の提供元である再生医療支援機構が、JSTTの承認認定を得る必要から羊膜の入手が遅れたため(23年4月から再開)、腸上皮と筋線維芽細胞の共培養を行った所、腸上皮細胞の長期培養と多層構造や立方体様形態をとる事を観察した.羊膜細胞については、2系統の近交系の妊娠ラットから羊膜細胞の分離・培養を行ったが、羊膜上皮細胞は数代(3-5代)で増殖が止まり継代培養が困難であったが、間葉系細胞は安定した継代培養を行い得た為、筋線維芽細胞との共培養を施行した(現在継続中)。それぞれの羊膜幹細胞については、現在共同実験施設での分離を依頼中である。
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