[内容]ラット開腹虚血再灌流モデルにおいて、血小板とクッパー細胞をそれぞれ蛍光標識してin vivoで観察できる生体蛍光顕微鏡システムを構築した。そこで肝血流再開後の血小板とクッパー細胞の類洞内動態をビデオ撮影して内皮との膠着や類洞血流について評価した。血流再開直後より類洞内皮と膠着する血小板数は再灌流時間の経過とともに増加し、その半数はクッパー細胞と膠着していることが判明した。電子顕微鏡では類洞内のクッパー細胞と血小板が膠着している姿を捉えることができた。また免疫染色ではクッパー細胞が多く存在しているZone1 (pre portal area)において、他の部位よりもアポトーシスが強く誘導されていることが判った。以上より類洞内における血小板とクッパー細胞の膠着がその後の肝微小循環障害の引き金となり虚血再灌流障害の成因となることが示唆された。 [意義] クッパー細胞を生体のなかで蛍光染色して、in vivoの実験モデルで観察した報告例はこれまでにない。生体蛍光顕微鏡を用いて従来の免疫染色で示されていたとおり、類洞内ではZone1を中心に蛍光染色されたクッパー細胞を確認することができた。また再灌流時間の経過とともにクッパー細胞と膠着する血小板数が増加する新しい知見が得られた。 [重要性] 生体顕微鏡撮影したのは血流再開直後の、クッパー細胞と血小板との相互作用が微小循環障害の引き金となっているとすると、この相互作用を防止することが効果的な肝虚血再灌流障害の抑制につながるといえる。
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