本研究の目的は、肝細胞癌切除検体を用い、抗酸化ストレス酵素群及びその中枢的転写因子Nrf2の発現を基に、治療抵抗性細胞集団を同定、選別し、それらの特徴を調べることで臨床的な治療に応用しようとするものである。 現在の成果: 肝細胞癌切除検体を約20例ほど収集し、-80度で保存してある。 このうち、3例ほどNrf2の免疫染色を施行した。腫瘍細胞の一部にNrf2陽性細胞を認めることが発見された。また、組織質量分析を過去の検体を含めて15例前後解析した。その結果、肝細胞癌組織と周囲非癌部肝組織との間に量の差を認めた脂質が数種類発見された。 現在、その脂質の差をもたらす原因酵素の遺伝子発現量の差、培養細胞を用いた原因遺伝子のknock-down、過剰発現による細胞機能変化を解析中である。 残念ながら、現時点ではNrf2発現細胞集団に特異的な発現差を認める脂質、蛋白質は同定されていない。よって、その差が得られない場合は、肝細胞癌・非癌部の脂質差をもたらす原因酵素の発現を調節をすることがNrf2の発現などに影響を及ぼすか、を検討し、何らかの形で肝細胞癌におけるNrf2の役割を調べる方向性への転換が必要かもしれない。
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