研究課題/領域番号 |
22591502
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
坂口 孝宣 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (70313955)
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研究分担者 |
稲葉 圭介 浜松医科大学, 医学部, 助教 (10397383)
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キーワード | 肝臓外科学 / 肝細胞癌 / 治療抵抗性 |
研究概要 |
本研究の目的は、肝細胞癌切除検体を用い、抗酸化ストレス酵素群及びその中枢的転写因子Nrf2の発現を基に、治療抵抗性細胞集団を同定、選別し、それらの特徴を調べることで臨床的な治療に応用しようとするものである。 現在の成果: 現在までに、我々は質量顕微鏡の手技を用いることで、肝細胞癌組織と周囲非癌部肝組織との間に量の差を認めた脂質があること、その原因となる脂質代謝酵素LPCAT1が肝細胞癌の増殖や浸潤に関与することを確認した(現在投稿中)。 また、現在までに5例の肝細胞癌切除検体を用いたNrf2免疫染色を施行し、腫瘍細胞の一部にNrf2陽性細胞を認めることを確認した。 しかし、質量顕微鏡解析上、Nrf2蛋白発現分布の差と正もしくは逆相関するような蛋白、脂質などの物質分布が確認されなかった。 よって、Nrf2によって発現調節される物質輸送蛋白の発現に着目する研究に切り替え、約30例の肝細胞癌切除検体を用いて、それら輸送蛋白の発現量や分布をWestern blotting、免疫染色などを用いて解析している。 現在までのところ、術前診断EOB-Gd造影MRI(EOB-MRI)においてEOBの肝細胞癌内取り込みのある症例では、ある種の輸送蛋白が高発現していること、切除検体近赤外線観察において術前肝機能評価として投与されたIndocyanine green (ICG)の蓄積が見られること、を発見した。この解析を継続することで、輸送蛋白に特異的に輸送されて肝細胞内に蓄積するような物質を同定すること、個々の症例での輸送蛋白分布を調べることでTailor-made chemtherapyへ臨床応用すること、の可能性がひらけてくる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
質量顕微鏡解析では非常に有意な結果が得られたものの、当初予想していた、Nrf2発現細胞分布と一致するような蛋白・脂質集団の同定が得られていない。 方向性の変換が必要であった。
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今後の研究の推進方策 |
転写因子Nrf2にこだわらず、化学療法抵抗性に関与する蛋白の同定を追求する方針である。 また、薬剤の輸送蛋白発現とEOBやICGの分布を比較検討することで、将来のtailor-made chemotherapyへの応用に期待する。
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