研究概要 |
胆管癌症例から切除された腫瘍組織のプロテオミクス解析より、正常組織よりも癌組織で過剰発現する遺伝子産物38種のうち特に発現量の変化が大きいもの4因子(actinin-1,actinin-4,DJ-1,cathepsinB)について癌細胞株19株を用いて発現状況をウエスタンブロット法でスクリーニングし低発現株と過剰発現株を同定した。これらをSCIDマウスに移植して得られた腫瘍組織を外科的に切除してパラフィン切片を作製して、それぞれの抗原に特異的なモノクローナル抗体を用いて免疫染色を施行しウエスタンブロットでのタンパク発現データと整合性のある染色条件を探し出した。一方で、北海道大学病院第二外科で切除された胆管癌症例96例のパラフィン切片から腫瘍部分4箇所と正常部分2か所を打ち抜いてTissueMicroarray(TMA)パラフィンブロックを作製しこれを材料にTMA切片を作製した。1枚のTMA切片には約50症例分の組織片が搭載されているため、2枚のTMA切片の処理で全ての症例を同時に染色することが可能となった。先に作製したSCIDマウス移植腫瘍の切片のうち過剰発現株を陽性対照、低発現株を陰性対照とし更にアイソタイプIgGを一次抗体として処理した陰性対照を用い、胆管癌症例の免疫染色を施行した。4つの因子のうち、actinin-4とDJ-1は正常細胞ではほとんど染色が見られなかったのに対し、癌細胞の細胞質で陽性となる症例が有意に多く(それぞれp<0.0001、p=0.0009)特異度はそれぞれ93.9%と87.9%であったことからも胆管上皮における非癌細胞と癌細胞を鑑別する有力なマーカーとなる可能性が示唆された。さらに、癌細胞におけるactinin-4の過剰発現は症例の生存率には相関しなかったが、DJ-1の過剰発現は発現低下症例に比して予後良好な傾向が見られた(p=0.0604)。
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