研究概要 |
膵癌に対する化学療法は最近めざましく進歩しているが、現在使用でき有望な抗癌剤は、ジェムザール(塩酸ゲムシタビン)またはS-1(経口5-FU系抗癌剤)の2種類であり、他の薬剤はこの2種類の治療成績を凌駕できていない。現状ではこれらの薬剤の有効性をいかに予測し無駄なく治療をできるかが治療成績の向上につながる。そのために、手術で得た膵癌組織標本を用いて、両者に関係する遺伝子発現を検索し、臨床経過と対応して相関関係を検討し、関係ある遺伝子を見つけることで、個々の患者の癌の特性に合わせた治療方針を決めることが重要である。 Real time RT-PCRにてジェムザール感受性遺伝子の発現を調べるために、新鮮凍結組織より microdissection法でRNAを抽出することを1年目の予定とした。また、5FUの感受性遺伝子および抵抗性遺伝子について、ホルマリン固定切除標本を以前のように免疫組織染色法にて発現を検索する。【結果】1.当初の予定した方法では、検体によって非常にばらつきがあったため、qualityの高いRNA抽出する方法をタカラバイオ株式会社と検討し条件設定した。当科で手術にて切除した新鮮凍結組織によりRNA抽出を約40例しか抽出できなかった。2.約150例を、TS,DPD,OPRTについて免疫組織染色した。【予定】1.100例の新鮮凍結組織よりRNAを抽出し、ジェムザール感受性遺伝子および抵抗性遺伝子、EMT関連遺伝子を精力的に見つける予定である。2.切除した膵癌組織ホルマリン固定標本を免疫組織染色法にて5-FU感受性遺伝子および抵抗性遺伝子であるTS,DPD,OPRT,RRについて、それらの発現と無再発および生存率を対比することで抗がん剤S-1の適応を明らかにする予定である。ジェムザールの適応も明らかになることを期待する。
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