研究概要 |
2004年から2010年までの摘出標本から免疫組織染色を185例に施行し、以前に染色した症例を合計しstageIII以上で検討した。以前のデータからTS高発現群(66%)あるいはDPD低発現群(56%)に5-FU門脈注入補助化学療法を行った症例は、生存率が一番よいことを報告した(Takeda S. Hepatogastroenterlogy 2001, Nakayama S. Ann Surgu 2004)。よって、今回もTS/DPDstatusに分類して生存率を求めた。【結果】切除膵癌stage III以上が合計254例となり、TS,DPD,OPRTの陽性率はそれぞれ54%,46%,82%であった。術後補助化学療法(3ヶ月~6ヶ月間)を行わなわず手術のみの症例では、TS陽性群は陰性群に比べて明らかに予後がよかった。TS陰性群はgemcitabine(gem)やS-1投与群で治療成績の向上が見られたが、TS陽性群は非投与群(手術のみ群)より若干の改善のみであった。一方TS陰性群は、元々の手術のみでの治療成績が悪いせいかgemやS-1投与群で治療効果が認められた。TS-DPD+ 49例、TS-DPD- 67例、TS+DPD+ 69例、TS+DPD- 69例のsubgroup解析で、TS-DPD+は、gemもS-1も効果は認めなかったが、TS-DPD-でS-1群に若干の効果が認められ、TS+DPD+群でgemよりS-1の治療成績がよかった。TS+DPD-群ではgemもS-1も5FUもほぼ同等の結果であった。OPRTは有意差を認めなかった。gem代謝酵素のrealtimePCRによる発現解析は症例数が少なく上記のような結果が得られなかった。【考察】TS/DPDstatusから見た200例以上の検討はなく、TS+DPD-群はgemまたはS-1、TS+DPD+群とTS-DPD-群はS-1を基本とする補助化学療法を、TS-DPD-群は新規抗がん剤で試みる方がよいと思われる。
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