研究概要 |
平成23年度までにアデノウイルスによるAutophagy誘導遺伝子LC-3の遺伝子導入を行うとともに、autophagosomeの誘導を顕微鏡下に確認をするなど、様々な薬剤導入後のオートファジー解析の手段を確立した。本年度はAutophagy誘導薬剤であるsalinomycinを膵癌細胞株に投与し、autophagyが膵癌薬物療法において薬剤耐性を増強するものか、低下させるものかを明らかにすることを目的とした研究を行った。 膵癌細胞株SUIT-2, AsPC-1にsalinomycinを投与すると濃度依存性にcell viabilityが低下し、autophagyが誘導されたことを示す内因性LC-3が増加し、autophagosomeを形成することをウエスタンブロット法および免疫組織化学染色法で確認した。また外因性にアデノウイルスによるLC-3を遺伝子導入を行った状態でもsalinomycinによるautophagosome形成を確認することができた。 次にどのような機序でcell viabilityが低下するかを、ウエスタンブロット法で確認したところ、salinomycinを投与すると細胞増殖能を司る中心的な役割を果たすMAPキナーゼ系の活性を低下させることが明らかとなった。その結果salinomycinにより膵癌細胞株にアポトーシスが誘導されることも判明した。 以上の結果より、膵癌細胞株においてautophagyが薬剤感受性を増強する可能性があることが示唆された。従ってautophagyを誘導する遺伝子をアデノウイルスにより強制導入することにより薬剤感受性を増強することができる可能性があり、治療への応用が期待される。
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