研究課題
本研究は、HMGB1蛋白に代表されるDAMPsを制御することよって、移植膵島の長期生着を目指すことを目的としている。前年度までに、細胞死抑制効果をもつ薬剤(NFkB阻害剤、caspase-3阻害剤)を用いた膵島培養を実施したところ、これらの処理により膵島の障害領域の軽減が得られることが確認された。培養後膵島のcentral necrosis領域が減少し、さらにTUNEL陽性細胞数の減少も確認された。障害領域の軽減によりその領域でのHMGB1の表出が軽減される結果を得た。さらに、近年、細胞死に先立ってDAMPsであるCalreticulinが表出し、その表出がtriggerとなり免疫原性細胞死を引き起こすことが示されつつあるため、Calreticulinの表出機構の解析に取り組んだ。免疫染色では、Calreticulinは分離直後から培養を続けるにつれ細胞表面への表出を示す傾向があり、Western blot法でもその発現の経時的な増加が示唆されたが、条件により必ずしも一定の結果を示さず、その解析にはさらに工夫されたアプローチが必要と思われた。また、培養の酸素濃度を変更(1%、6%、20%)し、各条件での細胞障害の程度、およびDAMPsの動向を評価したところ、1%では細胞障害が極めて強い一方、6%と20%では細胞障害の程度に有意な差は認めず、6%において酸化ストレスが緩和される傾向があることが示唆された。DAMPsの動向には今回の実験系では有意な差は認めなかったが、条件や実験系の変更により明らかにできる可能性があると思われた。膵島分離・培養過程において、DAMPsの発現・表出に変化が起きることは明らかにされつつある。移植結果の関連を明らかにすることで、DAMPsの制御を標的とした移植成績改善のストラテジーが確率しうる。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Pancreas
巻: 41(2) ページ: 245-252
10.1097/MPA.0b013e31822461c7