研究分担者 |
山本 雅一 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (60220498)
中山 正道 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (00338980)
正田 純一 築波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (90241827)
竹内 薫 築波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 准教授 (00192162)
|
研究概要 |
癌細胞表面の糖鎖構造の異常は転移・浸潤などの悪性挙動に深く関与することが知られている.糖転移酵素GnT-Vは,ノックアウトマウスの解析結果より,癌の転移・浸潤を促進する分子であることが報告されている.そこで本研究では,治癒切除にても早期に遠隔臓器転移再発がしばしば認められるpT_2胆嚢癌に着目し,GnT-V発現,臨床病理学的因子および血管新生能との関連性,さらに予後に及ぼす影響について検討した.pT2胆嚢癌90例を対象とした.GnT-V,の発現を免疫組織学化学にて解析し,その結果を病理学的因子および術後予後と比較検討した.また、CD31の発現を免疫組織学化学にて解析し,その結果をGnT-V発現と比較検討した.GnT-Vの免疫組織学的発現は細胞核上に顆粒状に染色される発現型(granular-type)と細胞質全体がびまん性に染色されるタイプ(diffuse-type)に分類された.GnT-V陽性は56例(granular-type31例,diffuse-type25例),また,陰性は34例であった.GnT-V発現の有無と発現型はいずれも,病理組織学的因子との間に有意な相関関係は認められなかった.治癒切除76例の5年生存率はGnT-V陽性例(n=46)で66%,陰性例(n=30)で88%であり,陽性例で有意に予後不良であった(P=0.028).陽性例では術後に,遠隔臓器転移が多い傾向にあり,特にdifuse-typeはnegative-typeと比較し有意に遠隔臓器転移をきたしていた(P<0.05).CD31染色による微小血管密度は,GnT-V陽性例(25.0/視野)は陰性例(15.8/視野)に比して有意に高値であった(P<0.05).pT2胆嚢癌におけるGnT-Vの発現および組織内分布は,腫瘍生物学的悪性度を反映する重要な予後因子であると考えられた.
|