研究課題
FGFR2IIIcは、FGFR2のアイソフォームの1つで、正常組織では主に間葉系細胞に発現し、前立腺癌や膀胱癌ではFGFR2IIIbからFGFR2IIIcアイソフォームへのクラススイッチが悪性度や上皮間葉転換(EMT)と関連することが報告されている。膵臓癌におけるFGFR2IIIcの発現と役割について検討したところ、膵臓癌培養細胞において、FGFR2IIIcの発現が確認され、ヒト膵臓癌症例の約70%にもFGFR2IIIcの発現がみられた。FGFR2IIIc陽性膵臓癌症例では、後腹膜浸潤と有意な相関が認められた。FGFR2IIIc遺伝子発現ベクターを、膵臓癌培養細胞のKLM-1に遺伝子導入し安定過剰発現株を作成したところ、in vitroでの細胞増殖能の亢進がみられ、ヌードマウスの皮下移植モデルにおいても増殖亢進が確認された。一方、FGFR2IIIcに対するsiRNAを作成し、PANc-1細胞に導入したところ、細胞増殖の抑制が認められた。さらにFGFR2IIIcに対するポリクローナル抗体を作成し、PANC-1細胞に投与したところ、用量依存性に増殖抑制効果が認められ、細胞の遊走能も抑制された。多くの膵臓癌症例でFGFR2IIIcが発現しており、その機能をsiRNAまたは抗体によって制御することは、新たな膵臓癌治療法となる可能性が示唆された。現在、FGFR2IIIbへのスプライシングを促進させるepithelial splicing regulatory protein(ESRP)-1,2の発現と、FGFR2IIIcと癌幹細胞の関係について検討を進めている。
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Oncology Reports
巻: (In press)
Cancer Biol Ther
巻: 11 ページ: 512-523
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http://www.nms-pathology.com/research/achievements/index.html