研究概要 |
凍結保存同種心臓弁・大動脈組織(ホモグラフト)は、感染性心血管病変に対し人工弁・人工血管よりも治療成績が優れていることが知られている。その抗感染性メカニズムについて、移植後に組織内に発現されるTrp代謝酵素Indoleamine 2,3-dioxygenase (IDO)の関与が過去の新鮮な血管グラフトを用いた実験データにより示唆されてきた。本実験では凍結保存を施した血管組織を用い、同種移植後グラフト内におけるIDOの発現とグラフト抗感染性に対する関与形態についてMRSAを用い検討することを目的とした。初年度の実験としては、ラット血管移植モデル用い後の分析用サンプルを準備する為の実験を行った。ラット血管移植手術の方法は約2cm長の胸部大動脈を腹部大動脈へ移植する方法を用いた。ドナーにはLewis rat (Charles River Japan Inc, Yokohama, Japan ; Lew)を、レシピエントはLewis rat(自家グラフト移植と同義)またはBrown Norway rat (Charles River Japan Inc.; BN)(同種移植と同義)を用いる。移植用グラフトは、新鮮(F)グラフトまたは凍結保存(CP)グラフトとして移植に用いた。血管組織の凍結保存方法はヒト心臓弁・血管組織の処理と同様の方法すなわちprogrammed freezing methodにて凍結保存装置(Profreeze, Nippon Freezer Co., Ltd, Tokyo, Japan)を用い-1℃/分の速度で凍結し、-80℃にて保存した後にグラフトとして移植実験に用いた。大動脈移植術は、ネンブタールの腹腔内投与による麻酔科で腹部正中切開のもと腹部大動脈腎動脈下に9-0ナイロン糸(Bear, Chiba, Japan)を用いて端端吻合(結節縫合)を行った。移植後7日目及び14日目に全身麻酔下にてグラフトを摘出しサンプルとした(各群n=6)。摘出したサンプルはRNA Iatorへ浸透させ一20℃で冷凍保存し今後の分子生物学的解析への準備とした。また、一部の移植後ラットは1年後にグラフトを摘出すべく飼育を継続している。
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