研究概要 |
凍結保存同種心臓弁・大動脈組織(ホモグラフト)の感染性心血管病変に対する抗感染性メカニズムについて、移植後に組織内に発現されるTrp代謝酵素Indoleamine 2,3-dioxygenase(IDO)の関与についてMRSAを用い検討した。初年度には、ラット血管移植モデルによる胸部大動脈を腹部大動脈へ移植(ドナー:Lewis rat、レシピエント:Brown Norway rat(allogeneic, 同種移植)。移植用グラフトは、新鮮(F)グラフト、凍結保存(CP)グラフト、移植を受けないFグラフトをコントロール群(ctrl群)を使用。凍結方法は、ヒト心臓弁・血管組織の処理と同様にprogrammed freezing methodにて、-1℃/分の速度で凍結し-80℃にて保存、移植実験の際に適宜急速解凍し用いた。移植後7日目及び14日目にグラフトを摘出(各群n=6)。摘出したサンプルはreal-time PCRによりIFN gamma, TNF alpha, IDOのRNA発現を定量測定。また同時に、各摘出グラフトおよびctrl群は、Muller-Hinton液に浸漬・加熱し組織内成分を上澄み液として抽出。MRSA培養の際に上澄み液を培地に加えることによって各群のMRSA増殖に与える影響の差を確認した。 IFN gamma, TNF alphaのRNA発現量はF,PC群共に顕著であった(両群に有意差なし)。IDOの発現量は同種F群の方がCP群よりも有意に多かった。MRSA増殖への影響は、同種F・CP群の両者とも移植期間に関係なく一定のMRSA増殖抑制効果を呈した。従って、同種移植組織はMRSA増殖を遅延させる効果を有し、IDO発現を含む特異的炎症反応の過程が関与する可能性が示唆された。また、増殖抑制効果はグラフトの凍結保存後も維持されていることが確認できた。
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