研究概要 |
(研究内容)末期心不全に対する治療として、多能性幹細胞(ES/iPS細胞)を用いた幹細胞治療を確立するべく、疾患動物モデル(虚血性心筋症モデル)を用いて前臨床段階の移植実験を行う。 (研究実績)昨年度までに、ラット亜急性期心筋梗塞モデルに対する、フローサイトメトリーの手法により(Yamashita JK et al.FASEB J.2005)分化誘導・分離したマウスES細胞由来心筋細胞の注入による移植では心機能回復効果が不十分であることが示された。今年度は移植効率を高めるため、温度感受性培養皿(UpCell,セルシード社)を用いて上記のES細胞由来心筋細胞をシート状に形成し、同モデルへの移植実験を行った。その結果、心機能増悪を抑える効果を認め、さらにその血管新生を中心とした左室リモデリング抑制メカニズムを解析し、最近報告を行った(Masumoto H,Ikeda T et al.,Stem Cells,in press)。 (意義および重要性)多能性幹細胞(ES/iPS)細胞を用いた心臓再生治療において、治療効率を上げうるひとつの方法として細胞シートを用いた方法が有用である可能性があることを今回明瞭に示すことができた。今後、ヒトiPS細胞から誘導した同様な心筋細胞シートを用いた移植実験を行い、生着効率および心機能回復効果の上昇を認められれば、臨床応用により近づくものと考えられる。また、各種細胞増殖因子の併用によりさらなる効果が期待できるかについても、今後検討を行う。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ヒトiPS細胞から誘導した同様な心筋細胞シートを用いた移植実験を行い、生着効率および心機能回復効果につき検討する。ヒトiPS細胞からの心筋細胞誘導は方法によっては低効率であり、その点は大きな問題点と一般的に考えられるが、我々が今回導入した新規のヒトiPS細胞からの心筋細胞分化誘導法(Uosaki H,Yamashita JK et al.,PLoS One 2011)を用いれば、高率に心筋細胞を得ることができ、この問題点を解決しうると考える。また、各種細胞増殖因子の併用によりさらなる効果が期待できるかについても、今後検討を行う。
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